高齢化と後継者不足に加え、飼料代や燃料価格高騰が畜産農家を襲っている。
1991年に牛肉とオレンジの輸入量制限が撤廃され輸入牛肉があふれる一方、国内の畜産農家の廃業が続いている。
1968年まで100万戸を超えていた肉用牛の生産農家は、いまや4万戸。「もはや限界だ」との悲鳴は全国から聞こえてくる。消費者も現実と向き合う時が来た。
- 内容
- 社会運動 No.452
牛肉の生産コストの6割は飼料代である。2021年度の飼料の国内自給率はわずか25パーセント。75パーセントを輸入にたよっているのは、これまでは輸入飼料が圧倒的に安かったからだ。
しかし、中国をはじめとする国際的な穀物需要が増加しており、今後価格が高止まりすることは確実だ。輸送コストも高くなっているうえ円安も影響し、牛肉コストは上がっている。
消費者も牛肉の価格が高くなったと感じるだろうが、生産者の負担はそれ以上に厳しくなっている。
また、最も深刻なのは後継者不足である。生産者が高齢になったとき、誰かに譲りたくとも後継ぎがいないのが現状だ。
牛肉の輸入自由化、BSE(牛海面状脳症)遺伝子組み換え、飼料や資材の燃料費の高騰など、生産者は多くの問題に直面してきた。厳しい事業環境のなか、持続可能な生産のために何が必要なのかを取材した。
消費者としては、生産者が置かれている現状を理解し、自分たちの問題だと考えることが大切だ。再生産可能な価格と、安定した利用は、持続可能な食糧生産のための前提である。
生産者、消費者が連携して何ができるのか。
目次
北海道で未来をさがす 国産牛肉が食卓から消える⁉(社会運動No.452)
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●For Readers
国策と消費者に翻弄される畜産農家
●北海道チクレン 畜産+酪農の現在
持続可能な畜産に向けて再生産可能な価格と安定した利用を
北海道チクレン農業協同組合連合会
代表理事理事長 伊藤重敏
「先が見えない」畜産農家の苦悩 ~食糧危機の最前線から
(有)肉牛工房ゆうあいファーム 代表取締役 伊藤浩市
800キロの生きた牛が真空パックの塊肉になるまで
株式会社 北海道チクレンミート
北見事業部北見食肉センター所長 竹山勇一
北見事業部部長 伊藤隆浩
1軒ずつでも酪農家を増やしていきたい
株式会社 なかしゅんべつ未来牧場
専務取締役 友貞義照
●食料+気候の危機
自給体制に動き出す世界 転換する食料生産・供給の構図
(株)農林中金総合研究所 理事研究員 阮 蔚
大雨・高温・・・気候危機が迫る 日本の食糧基地 北海道
元北海道新聞経済部編集委員 森川 純
●アイヌ+開拓の歴史
「新しいアイヌ学」から見たアイヌの歴史---侵略者は歴史をも奪う
北海道大学名誉教授 小野有五
北海道の自治に深く関わる 開拓事業の初期の混乱
札幌大学名誉教授 桑原真人
●書評
『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』 山本江理
「増補版 北海道の歴史がわかる本」 宮崎 徹
●連載
フォルケリな日常 北欧の暮らしの中の政治 第11回
ノルウェーの先住民サーミ抑圧の歴史と 若者と女性のムーブメント
ジャーナリスト・写真家 鐙 麻樹
ネット最前線・観測記②
「アイヌヘイト」を煽り、囃したてる政治家たち
外国人人権法連絡会 事務局次長・市民セクター政策機構客員研究員 瀧 大知
●韓国の社会的経済と政治 第6回
韓国の社会的経済基本法制定はゾンビ企業の量産と国家経済を蝕む怪物なのか?
城南市協同組合協議会政策委員長・市民セクター政策機構客員研究員 崔 珉竟
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著者について
季刊『社会運動』編集長 白井和宏
伊藤重敏
竹山勇一
友貞義照
阮 蔚
森川 純
小野有五
桑原真人
山本江理
宮崎 徹
鐙 麻樹
瀧 大知
崔 珉竟
ISBN
978-4775201428
出版年月日
2023年10月15日
判型・ページ数
A5判・128ページ