第5話 宿題なんていらない(ヒュバート・ウィンタース)

 サークル対話をしていたら、一人の子が「どうしてこの学校には宿題がないの」と言った。

 実は、これは他の子どもたちからもよく聞かれたことのある問いだった。子どもたちは、他の学校には宿題があるのを知っていたからだ。ある子などは「本当の学校には、中学校と同じように宿題があるんだよ」とさえ言っていたくらいだ。

 これは、いい対話になるぞ!

 さっそく、子どもたちと一緒に、宿題の問題点と利点を並べたリストを作ることにした。

問題点

  • 時間がかかるので遊ぶ時間がなくなる
  • いつも鞄を持って学校に行ったり帰ったりしなくてはならないので面倒
  • たとえば、誰かの誕生日パーティがあって時間がなくなってしまい宿題ができなかったら、罰を受ける
  • お父さんにもお母さんにも手伝ってもらえない子は不運だ
  • 宿題でわからないことがあっても誰にも聞けない

利点

  • もしかすると頭が少し良くなるかもしれない
  • もし、一生懸命頑張ったら、もしかすると大学進学校に進学できるかもしれない
  • 家でたくさん勉強をすれば、学校ではあまり勉強しなくても済む
  • 家でお兄さんかお姉さんに宿題をやって貰えば、いい点がもらえる

 つづいて、私たちは、問題点と利点を比べて、宿題はあったほうがいいのかどうかを検討しみた。これは結構熱い議論となったが、結果的には、子どもたちは、利点は本当に重要なものではない、という結論に達した。

 本当に勉強したかったら、学校でも頑張って特別にたくさん勉強することはできるし、家では、本当に自分がしたいことができる。たとえば、天文学者について知りたければ、本やコンピューターで調べることができる。そうすれば、たくさんのことを学ぶことができる。

 「本当にそうだ」と他の子が言った。自然の中に入って行って、木や花や動物をよく観察できる、と。そういうことからもたくさんのことを学べる。

 それに、時間があったら、何かクラブにも行けるし、そこで、サッカーや体操が上手くなったり、ピアノのレッスンを受けることもできる。そう、どの子もみんな、本当に自分が興味のあることについて学ぶことができるようになる。その方が、また家でもっと算数の練習をするとか、国語の練習をするというのより、ずっといい。

 最終的に、私たちは、学校でしっかり勉強し、特に自分があまり得意ではないことについて練習するのが大事だという点で合意に達した。どの子もみんな同じことをするのではなく、それぞれが「自分に相応しい」自分のプランに沿って学ぶ。だから、一人ひとりの子が自分で作った計画に沿って学ぶブロックアワーが、いかに大事なものかということがよくわかった。

 けれども、私はまだ、保護者会で、なぜ、私たちの学校には宿題がないのかを、改めて説得しなければならなかった。なぜなら、子どもたちの保護者は、宿題をとても重視していたからだ。保護者もまた、昔、そうやって学んできたわけだから、仕方のないことなのだけど…。(続く)

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