#04 不安を言葉に、心を軽くする

執筆陣3名のリアルな体験談

高橋さん:
そうですね。
その原因を突き詰めていくと、色々な事象が挙げられると思いますが、結局、それをどう乗り越えるか、変えていくかという段階になると、「現状では無理だよね」という話になりがちです。
そうではなく、この本では、レギュラー執筆者の帯津良一先生、安保徹先生、上野圭一先生の3人に、それぞれの経験の中で、ストレスやうつを体験したことがあったか、どのように乗り越えていったのか、ということを伺いました。
代替療法をベースに研究をされている方自身の体験談を知っていただくことで、読者の皆様にヒントを得ていただければ、と考えました。

川村さん:
つまり、具体的な事例として、お三方の先生方のそれぞれの生の声、リアルなメッセージを受け止めることによって、より具体的に理解できるような仕組み、本作りを目指したということでしょうか。

高橋さん:
そこが、おそらく「うつな気分をどう乗り越えるか」「どうしたらうつは解決できるのか」といったテーマの、本屋さんでたくさん見かけるような本、そういった一般的な本には書かれていない内容かと思います。

川村さん:
個々人によって抱えている問題は違うので、そこに焦点を合わせるのは難しいですよね。
この本一冊では収まりきらないようなテーマでもあると思いますが、最もご苦労された点、ここはきちんと見てほしい、という点を挙げるとすれば、どういった点でしょうか。

上野圭一先生が語る「オルタナティブな生き方」

高橋さん:
もし、どこか一つテーマを挙げるとすれば、上野圭一さんの44ページからの記事「生態系にフィットしてエコロジカルに生きる」を見ていただきたいです。

今考えると、少し分かりにくいタイトルだったかもしれません。
「ナチュラルでオルタナティブな暮らしのすすめ」というサブタイトルの方をタイトルにしても良かったかもしれませんね。

川村さん:
自然の中で、これまでの生き方とは違う暮らし方をする、ということですが、要約するとどのようなことでしょうか。

高橋さん:
きっとそう聞かれるだろうなと思って、今、私もどうお答えしようか考えていたのですが…。
要約すると、上野先生も、社会人時代にストレスやうつを体験されたというお話でした。
どのような社会生活を送っていたかというと、大学を卒業されて、日本のテレビ局に勤めていらっしゃいました。
当時、日本のテレビ局は優秀な方が多く、給与待遇も良く、20代で港区や渋谷区といった東京の一等地のマンションを購入して暮らしていたそうです。
なんとそのマンションが当時、メゾネット式で9階と10階の部分を使っていたということで、物質的に豊かな生活を送り、一時期は謳歌していたそうです。

しかし、しばらくすると、「こんなことをしていて良いのだろうか」という気持ちに変わっていったそうです。
そうこうしているうちに、どんどんどんどん気持ちが行き詰まり、体調を崩してしまった。
これ以上、今の状態で勤めていられない状態になってしまったそうです。

バークレーは、リベラルな人たちが集まっている街です。
そこで、上野さんは、自分が抱えている矛盾をどう解決していったら良いかを考え、周りと接する中で、研究所や大学を辞めてドロップアウトしてきた仲間と出会いました。
肌の色や言語が違う中でも、共通する世界観があることに気づき、「オルタナティブ」という考え方に出会いました。

川村さん:
当時、バークレーはオルタナティブのメッカ(中心地)の一つと言われていましたね。

高橋さん:
上野さんは、最初は「オルタナティブ」を「新たなもの」「代替案」と捉えていましたが、1年、2年と暮らす中で、もう一つの価値観、「より良いもの」「今のものに取って代わるもの」「生態系にフィットするもの(エコロジカルなもの)」という意味に気づきました。
そして、自分の居場所を見つけ、日本に戻ってきて、代替療法を広める活動をされるようになりました。

川村さん:
私たちの年代にとって、カリフォルニアのバークレー校のあるエリアは、ある意味、フラワーピープルや60年代のヒッピー文化など、これまでの生き方、考え方とは全く違うやり方を提示しようという動きが根付いた場所です。
上野さんも、そこで滞在することによって、自分なりの方法論を見つけていこうということになったのですね。

そういうことの中で、最終的にこの本で、逆に少しやり残したと感じる点、あるいは内容が薄くなっていると感じるようなところはございますでしょうか。

高橋さん:
このテーマは、パズルのピースをすべて埋めて完成、というような性質のものではありません。
明確な枠組みや、どこまでやれば合格といった基準がないのです。
ですから、永遠に考え続けるというか、別の側面から検証していくというか…。
算術のように明確な正解があるわけではないのです。

時間を経ても色褪せないメッセージ

川村さん:
それでは、発行から十数年経ってはいますが、現代の読者がこの本を手に取ったとしても、うつに関する考え方や対処法として、十分に通用する内容だと理解してよろしいでしょうか。

高橋さん:
そうですね。
これは2007年に発行した書籍ですので、十数年、正確には17年前になりますが、そういった意味での時間経過によって内容が古びてしまったということはないと考えます。

例えば、安保さんは映画をよくご覧になっていて、映画通だと伺っています。
もし、「自分の人生の方向を決めるヒントになった映画を3本教えてください」と言ったら、きっと答えてくれるでしょう。
それは、自分自身のメンターになるもの、生き方の指針になるもの、そういったものを集めてみたかった本、と見ていただけると、何か分かっていただけることがあるかもしれません。

川村さん:
いや、それは非常に興味深い言葉だと思います。
今日は、私自身もメンタルという難しいテーマについて質問させていただいたので、少ししどろもどろになってしまい申し訳ありませんでした。
今、編集長がおっしゃった、非常に含蓄に富んだお話で、これからの自分の生き方や考え方の指針となりうるものとして、この第4号「つらい心をあ軽くする本」を手に取っていただければと思います。

最後に、編集長、何か付け加えることはありますか。

高橋さん:
話しながら、自分の中でいつもまとめてしまっているのですが…。
この本は、繰り返しになりますが、上野先生、帯津先生、安保先生がそれぞれの体験を綴った本ですので、その物語を映画を観るように読んでいただければ、きっと何か心に残るものがあると思います。

川村さん:
引き続き次回も、「健康やり直し倶楽部」は続いていきますので、皆さん、ご視聴の方をよろしくお願いします。
本日はどうもありがとうございました。

高橋さん:
どうもありがとうございました。

「健康やり直し倶楽部・第4回 不安を言葉に、心を軽くする」 ダウンロード


※雑誌「ナチュラル&オルタナティブ ヘルスブック」は2007年から2009年にかけて出版されたものです。そのため、記事の内容は当時の状況に基づいています。

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