【P.18-20】食事で高める免疫力/『「自然治癒力を高める」新シリーズ「ナチュラル・オルタナティブ」ヘルスブック① 「なぜ 病気になるのか?」を食べることから考える』

免疫力を最大限に生かして病気を予防・治療するために
食事で高める免疫力

食事は血管や臓器をコントロールしている自律神経に、直接作用します。
脂肪分の多い食品、甘い食品、冷たいものを摂りすぎるとこの自律神経のバランスが崩れ免疫力が低下します。また、心と体がバラバラの現代の栄養学だけでは、免疫力を高めることはなかなかたいへんです。
病気になりにくい、丈夫な体をつくるための毎日の食事について考えます。

これだけ知れば健康になれる、食と免疫力のやさしい話

免疫とは、体になにかしらの異常が生じたときに、それを察知して修復する身体のシステムです。
がんやアレルギー疾患、糖尿病、高血圧、潰瘍性大腸炎、うつ病、腰痛といった病気や症状もすべて体を健康な状態に戻そうとする免疫の治癒反応であり、体内で免疫システムが正しく働いていれば、これらの病気は予防でき、かかったとしても治癒へと向かいます。
また、免疫は体内の血管や臓器をコントロールしている交感神経、副交感神経という自律神経と連動しています。そしてこの自律神経のバランスが崩れると免疫力が低下するのです。
食べ物は、自律神経に直接作用する働きが強く、例えば砂糖や脂肪分の摂りすぎは交感神経を優位にし玄米、小魚、菜食中心の食生活は副交感神経を優位にします。
免疫力を高めるための毎日の食生活で大切なことは、副交感神経を優位にする食事を心がけることとです。さらに極度の交感神経優位、あるいは副交感神経優位の状態に自律神経が働かないようにするということも大切です。

心と体がバラバラの現代の食生活が危ない

消化管は、副交感神経に支配されているのでストレスがかかったときに無性に食べたくなるのは、たくさん食べて副交感神経を優位にして解消する体の反応です。
ご飯を食べ過ぎてしまう人やお菓子をたくさん食べてしまう人に、その行為を単独で解決させることは困難で、こういう人は仕事が忙しいとか、心に悩みがあるときに過食によって心身のバランスをとっています。

そういうときに、ただ食べるのをやめなさいと言っても解決策にはなりません。その引き金になっている辛さや悲しさを引き出して治すことが必要になります。
たくさん食べる行為は、心身の辛さや悲しさを一時的には解消してくれますが、続けると肥満や運動不足になって自分の体をもてあまし一気に息がきれて交感神経優位になり免疫力が低下します。
さらに過食し続けると今度は心臓や血管に負担がかかって狭心症、心筋梗塞、脳卒中、くも膜下出血という病気になります。
肉が大好き、揚げ物が好きな人は高カロリーを体が要求していて、こういった嗜好の人の生活スタイルを聞いてみると、長時間労働とか独特な生き方の偏りが背景にあります。長時間労動をしている人は、食事時間が短くなりますから野菜は不向きになり、カロリーの高い脂身の多い肉、揚げ物好きになるのではないでしょうか。

菓子パンとジュースの生活が今の子どもたちをダメにしている

非行少年や登校拒否児とのカウンセリングに長年従事し、「心の荒れと糖との関連」を考究している岩手大学名誉教授の大沢博先生から学んだのですが、菓子パンとジュースの食事は子どもたち、若者にとってすごく食べやすい食事で、ご飯や野菜のおかずを食べるより菓子パンとジュースのほうが満ち足ります。
甘いもの中心の食事は、血糖上昇が一気にきて元気になるメリットはありますが、インシュリンの分泌を誘発して1時間半、2時間後に激しい低血糖が生じるという弱点があります。
すると、さっきまで元気だった若者が、なんか急にイライラしてけだるそうにして、ささいなことにも頭にくる、怒り出すという行動をします。

私たちは低血糖になったとき、ジュースがあるとそのまま血糖をもとに戻せるのですが、まわりにジュースがないときは、交感神経が緊張してアドレナリンの作用で血糖を上げます。これがキレる現象です。
キレた後は血糖値が元に戻っているのでさっぱりしてケロッとしていますが、その間に物を投げたり、暴力をふるうという独特の過激な行動に走りますので、甘いもので元気を出しても、すぐ元気を失いキレる原因になります。

生活の乱れは普通に生きているレベルまで広がっている

先日の週末の朝早く、コーヒーショップに立ち寄ったときのことですが、朝食にコーヒーと菓子パンを食べている若い人たちがたくさんいました。中にはコーヒーの代わりにジュースを飲んでいる人もいました。
この光景には私も驚いたのですが、食生活の乱れは普通の人が普通に生きているレベルまで広がっています。
パンとジュース、パンとコーヒーというカタカナ料理はおしゃれな面があり、朝食として日常的に広がっていますが、こういった食事は、お昼まで体が持たずに午前中に低血糖になってイライラして冷静さを失う危険性があります。
ご飯を炊いて、みそ汁を作って、野菜の煮付けを食べる、という朝ご飯を、病気にならないための食事の基本として多くの人に実行してもらいたいですね。

体にたまった毒の排出を助ける食物繊維

収穫したばかりの野菜や果物も新鮮ですけれど、命のある状態の生き物がいちばん新鮮です。
人間の体内で活動している酵素は腸内細菌の中で生きています。そして、体内を健康に保つには、この酵素を育てるのに適した、きれいな腸内環境をつくることが大切で、そのためにも食物繊維は重要な役目をしています。
体にたまった毒の排出方法としては便からの排出がおよそ75パーセント。便の量が増えていろんな老廃物を出すとか、腸内細菌が増えて腐敗がおこらないように体調を整えるには、食物繊維なしには不可能です。
パンとジュースには食物繊維はありませんし、野菜サラダには食物繊維が含まれていますが量的に摂れません。特にサラダ菜類はボリュームが多くみえますが、食物繊維の量は少ないのです。
食物繊維の豊富な野菜の煮付け、切干大根、ひじき、おからなどの料理を食べると一気に便の量が増えて、腐敗臭が減って、体に入ってくる重金属でもなんでも排泄してくれます。

便秘している人は血液が汚れている

先日、新谷弘実先生(米国アルバート・アインシュタイン医科大学外科教授)の講演を聞いたとき「腐敗した腸内ガスは火山噴火で出る有害ガスよりも有害で、硫化水素やメタンガスをたくさん出す」と言われていました。
よくトイレにかけ込んだとき前の人の臭いが残っていることがあります。腸で発生した有害物質は、腸管壁から血液中に吸収されますので人間の出すガスが、おのれの体を汚していると同時に、地球環境を汚染しています。
ということは、一人ひとりが健康になれば、血液の汚れも浄化されて地球環境もきれいになるということにもつながりますし、このような研究がすすめば、少し飛躍しますが今、世界で危惧されている地球温暖化による環境負荷対策にもなるのではないでしょうか。

安保 徹  新潟大学大学院医歯学総合研究科教授
あぼとおる 1947年青森県生まれ。東北大学医学部卒業。1980年米国アラバマ州立大学留学中に、ヒトNK細胞抗原CD57に対するモノクローナル抗体(Leu─7)を作製。1989年胸腺外分化T細胞を発見。1996年白血球の自律神経支配のメカニズムを解明。2000年、百年来の通説、胃潰瘍=胃酸説を覆す顆粒球説を発表し大きな衝撃を与える。英文論文の発表数は200本以上、国際的な場で精力的に活躍し続ける世界的免疫学者。著書に『未来免疫学』、『免疫革命』、
『ガンは自分で治せる』『薬をやめると病気は治る』等、顆粒球・リンパ球理論で免疫学関連の著書多数

(『「自然治癒力を高める」新シリーズ「ナチュラル・オルタナティブ」ヘルスブック① 「なぜ 病気になるのか?」を食べることから考える』より抜粋)

ナチュラルオルタ1 「なぜ病気になるのか?」を食べることから考える 表紙

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健康と心身の調和をテーマにしたポッドキャスト番組「健康やり直し倶楽部」の初回エピソードでは、健康雑誌「ナチュラル&オルタナティブ ヘルスブック」(ナチュラル・オルタ)の創刊号を基に、「自然治癒力」と「免疫力」の重要性、そして「なぜ病気になるのかを食べることから考える」という特集テーマについて、司会者の川村氏と編集長の高橋氏が深く掘り下げて語り合っています。是非お聞きください。

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