今、目の前にいるあなたの子ども、そして、街や公園で見かける子どもの様子にじっと目を凝らして見ましょう。ただ、黙って。危険がない限り、じっと子どもの様子を見守ってみましょう。きっと、子どもたちの仕草の一つひとつから、子どもたちが好奇心と、「知りたい、学びたい、大きくなりたい」という気持ちが伝わってくるはずです。
大人が「ダメダメ」「うるさい」「じっとして」と言っている間に、子どもたちが持っている学びたいという意欲、生きるために物事を探求する力が台無しになっているのかもしれません。
哲学は、気難しい顔をした哲学者の専有物ではありません。子どもたちこそ哲学者なのです。子どもたちは、始終、身の回りにある不思議に引きつけられ、不思議の後にある意味を見出そうとしています。
てつがくカードは、子どもたちのそういう考えに道を拓き、答えがなくても、物事を深く見つめ、深く考える練習をするための道具です。子どもたちは、難しい言葉は知りません。でも、子どもたちが口にする言葉には、哲学者顔負けの深い問いや深い理解が人んでいます。なぜなら子どもたちはみな、生きるための思考力や探求力をインプットされて生まれてきているからです。
どうか、そんな子供たちの大きく広い可能性の目を摘み取ってしまわないように。あなたも一緒に、子どもたちと哲学者になってみてください。
「子どもたちと(大人も)てつがくしよう!!ーてつがくカードの使い方」
小冊子 あとがきより
リヒテルズ・直子
九州大学大学院修士課程(比較教育学)及び博士課程(社会学)単位取得修了。アジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国に歴住後、1996年よりオランダに在住。同国の社会事情や教育について研究をしてきた。特に、オランダのイエナプランを初めて伝えたイエナプラン教育の第一人者として、日本イエナプラン教育協会の設置と発展に貢献。現在同協会の「特別顧問」であり、オランダではイエナプラン教員の専門資格を持つと同時に、イエナプランの発展に貢献した人に贈られるエイル賞の受賞者でもある。2011年以来、オランダで毎年数回、本講座で使用するテキストの著者二人とともに、日本人向けの各種の研修を企画し、指導と助言にあたってきた。著書多数。子どもたちの「対話力、考える力」を引き出す『てつがくおしゃべりカード』『てつがく絵カード』(以上ほんの木)日本語版訳者。